2012年4月28日 (土)

滞在中から制作してた作品

3月のイタリア滞在中も下宿で制作してました。1点でも多く新作を出したいですからね。と言っても、時間を考えてもエアブラシを使う作業までは出来ないので、下絵と切る作業までを滞在中にやりました。

だいたいイタリアの家ってのはキッチン以外は照明が暗いんです。私が借りてた部屋も作業が出来る程明るくなかったので、市場で売ってた安いライトを買いました。

ライトを買った日の夜は酒を飲んで帰ったので、作業はしなかったんですけどね。でも寝る時に日本から持ち込んだ本でも読みながらノンビリするかなって事で、買ったばかりのライトをパチッと付けて、ベッドに寝転んだ。最近はゆっくり本を読む暇も無かったので、あ~幸せと思ったんだよね。

その瞬間、電球がパンッ!!って音がして、部屋は真っ暗。ええっ!?と思ってライトのスイッチをいじったけど明かりは点かず。自室のスイッチとか、キッチン、トイレのスイッチもいじってみたけど真っ暗なまま。どうやらブレーカーが落ちたみたいで、私の部屋だけでなく、家全部が真っ暗になった。下宿の同居人は料理人で、いつも帰りは遅いので、家には私一人。ブレーカーがどこにあるのかわからん。

・・・まあ、良いか。気持ち良く酔ってるし。ブレーカー探すのも面倒くさい。寝ちゃおう。

と言う訳で寝てたんですけどね。その内、同居人が友達を連れて帰って来たけど、「あれ?」とか言って、スイッチをカチャカチャいじってたのが聞こえた。「す・・・すまねえ。」と心の中で笑いながら詫びて眠りについた。いや、私のせいだってのはわかってるんですけどね。どうも笑えて来てしまって。

翌朝、起きたらキッチンで同居人とその友達(前のブログで書いたけど、この子達は卒業旅行でタダで泊まってたんだと。)と顔を合わせた。「すみません。昨夜はうるさかったでしょう?」と言われたけど、「いえいえ。酔っぱらって寝てたので全く気が付きませんでした。それよりも昨日、家を真っ暗にしたのは私です。すみません。」と頭下げて謝りました。まさかさ、40wの電球を点けただけでブレーカーが落ちるとは思わなかったんだってば。

後でブロンズ職人のドゥッチョ・バンキさんの所でその話をしたら、そういう話はよくあるとの事で、調べてくれるそうなので、一度下宿に戻ってライトと電球を持って行きました。

新しい電球を付けて試してみたけど、特に問題無し。ライト本体でなく電球が不良品だったみたいですね。よく見ると電球のソケットの部分に小さな穴が開いて、煙が出た跡があった。危ないなあ・・・。

そういう訳で、制作する環境を整えるのにもけっこう時間がかかりまして、制作スタートは3月10日でした。滞在して1週間以上過ぎてましたね。日曜日は職人さんの工房は閉まってるし、足を休ませたかったので、下宿にいて作業してましたけどね。ほとんどの日はお酒を飲む事があっても、帰って2時間ほど仮眠を取ってから夜中に制作してたりしました。

Photo

これが出発前の段階。サイズは50×70cm。名古屋で木地師をやってる大蔵真さんです。木地師と言うのは、ろくろでお椀とかお盆を作る職人さんですね。

2748

下絵を徐々に進めて行く。大蔵さんは50代続いた木地師の家系です。と言っても、直系とかそういう意味ではなく、全国に木地師の末裔は散らばっているそうで、大蔵さんとか小椋さんという苗字の人は木地師の家の出が多いんだそうです。

2839

下絵終了。大蔵真さんの家は元は滋賀県の山奥に一族で住んでいて、木地師を営んでいたそうですが、ほぼ自給自足に近い生活をしていたそうです。

2843

切り始め。私はいつも左上から切って行きます。大蔵真さんの家が名古屋に出て来たのは戦後すぐで、以後ずっと同じ場所で木地師をやっています。

2853

これが帰国の2日前の段階。帰国前日の夜はお食事会で、お酒も控え目。下宿に帰ってから作業を再開。

2856

徹夜で切り終えました。イタリア出発前日も徹夜だったけど、帰国前日も徹夜。睡眠は飛行機に乗ってからで良い。不安だったのは、切り終えると同時に緊張の糸が切れて机に突っ伏して寝ちゃう事。また飛行機に乗り遅れたら、えらいこっちゃ。

出発前に「切る所まではイタリアでやって来る!!」とこのブログ宣言していたので、ギリギリで何とか公約を果たした!まあ、別に出来なかったからと言って、誰も文句は言わないだろうけど、自分が自分に負けるみたいで嫌なんだよね。

で、ここからはイタリア滞在記とは関係無いんだけど、既に作品は完成してるので制作過程を見せて行きます。

2860

帰国したその日にエアブラシを使ってアクリル絵の具の黒を吹き付ける。これで黒い紙を切ったのと同じ状態にします。古新聞に挟んで丸めてスーツケースに入れて持ち帰ったので、傷んでないかと思いましたが大丈夫でした。

2867

着色した紙片を裏側から貼り付けて行きます。いつもはエアブラシで1箇所グラデーションを付けるだけですが、今回は画面にボリュームが欲しいので、アクリル絵の具を筆で厚塗りして油絵のような雰囲気にした紙を貼ります。まだ貼らない場所は新聞紙で包んで保護しておきます。いじってる内に破れちゃうからね。

2876

手前にある物から徐々に貼って行きます。紙の厚みだけで自然な立体感は出ます。大蔵さんが使ってるろくろ、戦後からずっと使ってます。70年近く使い続けている事になるので、ここまで使い込むと命があるみたい。大蔵さんと一緒に一生懸命働いてる感じで、見ていてジーンと来ました。

151b

完成。制作期間は1ヶ月ぐらいかかったかな。イタリアで作業を進めておいて良かったよ。今後の制作ノルマが楽になる。じっくり作り込んだので、充実した時間を過ごせました。完成したのは1週間ぐらい前でして、今は別の作品に取り掛かってます。写真をA4サイズにプリントして大蔵さんに送ったら、丁寧なお礼状を貰いました。喜んでくれたようで良かった。次も頑張らなきゃね。

| | コメント (2)

2012年4月14日 (土)

家具修復職人、ジュゼッペ・ゴッツィ

814

5人目の職人さんです。今年取材した職人さんは、これで終わりです。今年の秋の個展のテーマは日本の職人シリーズなので、制作するのは早くても年末からですけどね。次にイタリアに行くまでに5人全員完成するかなあ・・・。

ともあれ、ジュゼッペ・ゴッツィさん。通称ベッペ。ベルッティ通りに工房があるのですが、この通りも職人さんが多くて、これまでにヴァイオリンのサンティーニさん、製本のジャンニーニさん、木製象嵌のオリヴァストリさんと3人も切り絵にしています。

で、ベッペさんの工房のすぐ隣がオリヴァストリさんなので、紹介してもらいました。(飛び込みと違って気が楽だねえ。)

ベッペさんの他にも2軒の家具修復の工房があります。私が取材に行った時は、その内の一人、ラッビさんが一緒に働いてました。上の画像で手前の帽子をかぶった人が工房主であるベッペさん。奥にいるのがラッビさんです。ラッビさんの工房も後で見せてもらいました。面白い工房でしたが、ちゃんと取材するのは来年にします。

と、こうなったらベルッティ通りの職人さん、全部切り絵にしちゃおうかな。もう1軒の家具修復のメコッチさんの工房も面白そうだし。あともう1軒、紙の修復の工房もあるので、ベッペさんを含めて4軒切り絵にすれば制覇出来る。・・・気長にやろう。

779

フィレンツェの家具修復工房は、どこも14世紀、15世紀の家具がゴロゴロしてます。ベッペさんの工房も奥へ行くと家具が積んであって迷宮みたいになってますね。こういう所の空気は妙に落ち着くんだよな。

以上で今年取材した職人さんの紹介を終わります。次回のブログでは風景の切り絵の為に訪れた町の紹介をして行きます。

| | コメント (0)

2012年4月13日 (金)

星型ランプ職人、ファブリッツィオ・ボルゲレージ

今年取材した4人目の職人さんです。星型のランプを作るボルゲレージさん。ピッティ宮殿の前の通りに平行に走っている裏通り、トスカネッラ通りに工房を構えています。この通りは昔から職人さんの工房が多いので、私が住んでた頃もよく散歩して工房の中の様子をのぞいたりしてました。

722

真鍮で枠を作ってガラスをはめ込んで仕上げてあります。外からでもパッと目立つ。いつか制作したいなと思っていた工房の一つでしたが、これまで職人さんに話しかけた事がないんです。

と、こう書くと意外と思われるかもしれませんが、私は職人さんであれば手当り次第に声をかけてる訳じゃないんです。元々、人見知りする性格なので、絶対に切り絵にする人だけと接触してます。

と言う訳で、飛び込みで取材を申し込みました。毎度毎度、飛び込む時は緊張しますね。だいぶ前からスパイと思われて取材拒否に遭う事も多かったし。中国人が工房に入り込んでバシャバシャ写真を撮って、コピー商品を作って安く売っちゃうって事が多いんです。で、工房が潰れて行く。見た目、日本人か中国人か判断出来ないので、誤解されて断られるのも仕方ないんですけどね。

幸い、快くOKしてくれたので取材する事が出来ました。

767

こちらがボルゲレージさんです。ランプに付ける金具の調整をしているところですね。いろいろ話をしましたけど、はにかみながら答えてくれたのが印象的でした。工房の雰囲気も華やかで、良い切り絵が作れそうですね。

| | コメント (0)

2012年4月12日 (木)

革細工職人、ファビオ・カパンニ

340

ファビオさんはフィレンツェからバスで1時間程の距離にある、スカルぺリアという町に革製品の工房を構えています。コインケースやペンケース、メガネケース、名刺入れ、箱など、革を使って色んな物を作っています。画像はペンケースの表面を拭いてきれいにしているところ。

この工房には日本人の荒山直久君が働いています。

352

荒山君とはフィレンツェの駅近くにお店がある、ジュゼッペ・ファナーラさんの所で修業していた時に知り合いました。その後、同業者であるファビオさんの工房に就職しました。その後も、たまにファビオさんと一緒にジュゼッペさんのお店に配達に来てたりしたので、何となくファビオさんとも顔見知りになったのです。

荒山君の他にも職人さんが働いてます。総勢6人。工房と言うより工場と言う方が良いぐらいの規模です。

昨年、ファビオさんの父親のヴァスコさんを切り絵にしたので、今年はファビオさんを取材。実は昨年、取材に来た時にバイヤーさんが来ていて、ファビオさんは商談をしなければならなかったので、やむなくお父さんの方を取材したんです。私とほとんど喋れなかったので、ファビオさんはかなり機嫌が悪かったそうです。

という訳で今年は時間をたっぷり取って取材。いろいろと話も出来たし、欲しかった革製品も買わせてもらったのでお互い満足でした。

424_2

こちらはペンケースに色を塗っている作業。手前には木型がはまって色を塗られたペンケースが立ててある。

ガキ大将みたいに工房をグイグイ引っ張って行くエネルギッシュな人です。切り絵になるのをすごく楽しみにしてくれてるので、なるべく早めに作らないとね。

| | コメント (0)

2012年4月 9日 (月)

モザイク工房 ココモザイコ

2011ott052990

イタリア滞在記再開です。

さて3月7日はフィレンツェを出て、ラヴェンナという町に行って来ました。ラヴェンナはモザイクが有名なので、かねてからモザイク職人の取材に行きたいと思ってたのですけど、コネが無いのでどうしたものかなと・・・。幸運な事に、年末の東京での個展で、ラヴェンナでモザイクの修業をして、今は東京でモザイコ・カンポという工房を構える荒木智子さんという方が見に来てくれました。

この荒木さんって方、実はHPの方は以前から知ってたんですけどね。「イタリア」とか「職人」とかで検索してたら荒木さんのHPを発見した。連絡を取ってみようかと思ってたら、荒木さんの方から来てくれました。

個展の時に「ラヴェンナの職人さんを紹介して下さい。」とお願いしてあったので、イタリア出発前にメールしたら、すぐに返事が来て、荒木さんが修業した工房を教えてくれました。

という訳で、取材して来ましたが、この日は他にお客さんがいたので、工房主のルカさんが働いてる所を見る事は出来ませんでした。残念。上の画像は、お友達の写真家の方から後で送ってもらった写真です。色ガラスをハンマーで叩き割っている作業ですね。このガラス片を点描のように敷き詰めて表現します。

001

こちらが工房の様子。壁には色んなモザイクが飾ってあります。よく見るとDr.スランプのアラレちゃんのモザイクが見える。・・・好きだなあ。

ラヴェンナには10年以上前に旅行しました。かなり好印象の町だったので、ココモザイコさんの取材を終えた後で町の取材。主要な教会は全部回って、中のモザイクも堪能して来ました。その話は次の機会に。

| | コメント (0)

2012年4月 6日 (金)

ろくろ師・ロランド

3月6日(月)より挨拶回り開始。とりあえず月曜日の午前中は、ほとんどの工房は準備中なので、生活雑貨・食材の買い物をして、午後から出かけました。最初に友人の中村貴寛君が所属している銀工房のフォリアさんの所に行くかと思い、電話してみたら午前からやってたので、じゃあお昼ご飯を一緒に食べようかって事で昼前に到着。

運の良い事に、工房でろくろ師さんが仕事している所を見る事が出来ました。

2651

ろくろ師のロランドさんです。この人は絵になる!とピーンと来ました。

という訳で1番目の取材決定!偶然の出会いは最大限に生かそう。フォリア工房にはちょくちょくお邪魔してるから何となく見かけた事はあったけど、話はした事がなかったんです。今回、初めて話をしたんだけど、実に感じの良い人でした。

ろくろ師と言うのは回転する円盤状の木型に金属の板を押し付けて、半円上に加工する職人さんです。前にも他のろくろ師を切り絵にした事はありましたが、その方は自分で店を構えてました。ロランドさんは通いの職人さんなので、自分の工房は持たないけど、だからこそフィレンツェの職人界の層の厚さも感じる事が出来る。

中村貴寛君もこの技術を試した事があったけど、首を痛めたとか言ってました。(肩だったかな?)本職のロランドさんはそういう事も無いそうです。仕事ぶりを見てると、暴れ馬を乗りこなしているようで、なかなか格好良い。

2654

手先が器用なので、帆船の模型作りが趣味なんだそうです。それにしても、良い表情してますねえ。

今年の個展のテーマは日本の職人シリーズなので、しばらくはイタリアの職人さんを切り絵にする事はないんだけどね。作るとしたら年末からになります。

| | コメント (6)

2012年2月28日 (火)

久々に日本の職人さん

209a

約1年ぶりに日本の職人さんの切り絵を制作しました。岡崎市の和蝋燭の職人さんで松井規有さんです。サイズは60×45cm。

作品は、芯を刺した串にロウを手で塗りつける工程です。大きい蝋燭だと数十回この工程を繰り返すので、断面が木の年輪のようになる。縦に竹の繊維のような筋も入ってるけど、これは松井さんの手の跡。ハゼの木から取れるロウを使う和蝋燭は油煙が少なく、長持ちするんだそうです。

和テイスト満開の工房だったので、取材したその日から大喜びで制作に取り掛かりました。ここ1週間が寝るのが勿体ないぐらいのエンジン全開モードでした。作ってて楽しかった。やっぱ、日本の職人さんは良いですねえ。

さて、3月2日からイタリア行きです。旅行の準備もしなきゃならんけど、時間作ってギリギリまで制作しよう♪

松井さんのHPに蝋燭の詳しい作り方が公開されています。興味のある方は見てみて下さい。

松井本和蝋燭工房

| | コメント (4)

2011年8月29日 (月)

漆職人さんとのコラボ作品

Mutou

昨年の6月に制作した名古屋仏壇の漆塗り職人武藤久由さんの切り絵です。サイズは45×35cm。完成してから、武藤さん本人が漆塗りの額縁を作ってくれました。(写真は額縁に収めて撮影してあります。)この作品は昨年11月の名古屋の中京大学、今年5月の長岡京の大阪成蹊大学での個展に出しているので、見てくれた人も多いと思います。

この方にお世話になる事も多いので、5月の長岡京の個展終了後、お礼にテントウムシの切り絵をプレゼントした事がありました。武藤さんはテントウムシが好きなようで(色が赤と黒の漆の色だからね。)本業の傍ら、テントウムシをあしらった小物なんかを作っておられます。ペンダントとか、マグネットとかクリップなんかですね。私もいくつか持っています。

Serie_di_encicropedia2_035_2

私がプレゼントした切り絵はこれです。9×9cm。時々、気分転換に作ってる図鑑シリーズですね。昆虫だけじゃなくて、魚・鳥・爬虫類・両生類・哺乳類・微生物など、片っ端から生き物を同じサイズで切り絵にしてます。6年前に作り始めたんですけど、1000点を目標に現在230点ぐらい作りました。

武藤さんは大変喜んでくれまして、偶々作ろうと思っていた蕎麦猪口(そばつゆを入れる器の事ね。)にこのデザインを使ってくれました。

383743435

赤と黒の漆を基本に、胸の部分には青貝を刷り込み、白漆で目を描いてあります。一つの蕎麦猪口に3種類のテントウムシが描かれています。これはカメノコテントウ。

Resize0052

こちらはナミテントウ。私の切り絵では胸より前の部分は枠で隠れて見えないので、武藤さんの方でそれっぽくデザインしてあります。

Resize0050

こちらがナナホシテントウ。青貝の部分がキラキラしてて綺麗だ・・・。

武藤さんによると、私の切り絵の特徴って、1.デザイン、2.切り絵独特のシャープな線、3.着色のぼかし、だそうで、それを追求した結果、今回のような表現に行きついたんだそうです。

・・・いやあ、ここまで真剣に取り組んでもらえると、すごく嬉しいですねえ。蒔絵筆で漆を塗り重ねてあるので、ほとんど立体的と言えるほど盛り上がっています。さぞ手触りも良いでしょうね。何よりも漆のツヤが色気がある!官能的!!

別の表現技法で蕎麦猪口マークⅡも考えてるそうです。

来月、名古屋で行われる尾張名古屋の職人展に、この蕎麦猪口と元デザインになった私の切り絵も並べて展示されるそうです。お近くの方は是非、見に行って下さいね。私も見に行きますので。

平成23年9月16日(金)~18日(日)

地下鉄栄駅4番出口より徒歩すぐ  オアシス21「銀河の広場」、NHK名古屋放送センタービル

2カ所にブースが出ていますが、作品が展示されるのはオアシス21の方です。あと、武藤さんは17日と18日に会場にいるそうです。

| | コメント (6)

2011年6月 8日 (水)

ジャンニーニ & クワタ

しばらくバタバタしてて中断してたけど、イタリア滞在記を再開します。こういうのは早めに書いておかないと駄目ですね。後で読み返して役に立つ事も多いので、自分の覚書としてもその時に感じた事なんかを忘れないうちに・・・。

さて、今年の滞在で取材した工房の紹介は終わりましたが、番外でもう1軒紹介します。

最近はフィレンツェでも職人仕事をバックアップしようとしてるみたいで、いくつかの組織がパンフレットを出して職人さんの工房を紹介してるんですね。で、今回の滞在でも知り合いの工房に置いてあったパンフレットを貰って来て、下宿で目を通してたら

Giannini e kuwata

という工房がありました。Gianniniってピッティ宮殿の前に店がある、あの老舗のジャンニーニ家の人かな?それにしても、クワタって明らかに日本人の姓だよな。だとしたら異国で工房をオープンするなんて大したものだ。気になるから見に行ってみようか・・・。

てな事を考えまして。住所を調べたら川の向こうで、近くに靴のステファノ・ベーメルさんとか、フォルテピアノのドナテッラさんの工房がある区域でした。てくてく歩いて行きまして、「ああ、ここか・・・。」と中をのぞいてたら、日本人らしい女性と目が合った。

「ははあ、この人がクワタさんか・・・。」と思ってたら、窓ガラスの向こうで、その女性は私の顔を見て驚いた表情をしてたので、一瞬後で私も思い出した「クワタって、桑田美智子さん!!」

・・・昔、コルシーニの職人展で知り合った人でした。桑田さんは当時は紙の修復家の下で働いてて、後で工房の見学もさせてもらってました。その修復家の工房は切り絵にはしなかったのですが、桑田さんは大変に聡明かつ優秀な人なので印象深かったんですね。

しかし、まだフィレンツェに居るとは思わなかった。桑田さんは日・英・伊・仏・独・露を喋れる人なので(この時点で凄さが分かるというものだ。)実際に私と知り合った時も「ここには仕事無いし、ロシアにでも行って探そうかと思ってます。」なんて事を言ってたので。

パートナーのラポ・ジャンニーニさんは、思った通りピッティの前のジャンニーニ家の出身で、当主のマリアさんとは従兄弟になるんだそうです。

革と紙を使った製本と文房具の店ですね。既製品も置いてますけど、彼らが本当にやりたいのはお客さん一人一人に合わせたオーダーメイド。

1766

写真は裁縫道具入れ。革張りで金で装飾がしてあります。模様はモザイクになってて、異なる色の革を嵌めこんであります。縁取りは金箔を押し付けて表現ししています。こういった作品をコンテストに出品しているんだそうです。

1768

こちらが工房の様子。手前がラポさん、奥が桑田さん。お店がオープンしたのは昨年の8月なので、まだ一年未満。壁なんかも全部自分たちで塗った手作りの店。「これでもだいぶ汚れて来たのよ。」と言ってましたが、まだまだ綺麗です。整理整頓されてるからかな。もうちょっと年月が経って風格が出て来た時に切り絵にしてみたいですね。

次回、フィレンツェに行くのが楽しみになって来ました。頑張れ、桑田さん!!

ATELIER GIANNINI & KUWATA

Borgo S. Frediano 133/R  50124 Firenze
Tel: +39 0552 399 305

| | コメント (4)

2011年5月26日 (木)

銅版画工房 イッポグリフォ

今回取材した工房はこれで最後です。いつもより少ないけど、前の滞在で取材した工房でまだ切り絵にしてない所もあるし(これを宿題と呼びます。)日本の職人シリーズも並行してやっていくつもりなので、まあこんなもんだろうと。

と言う訳で、最後は銅版画の工房イッポグリフォの主人ジャンニ・ラファエッリさんです。

691

銅版画の職人さんは初めてですね。これまで多数の職人さんと会って来たけど、一つの職種について一人というわけにもいかず、けっこう重複してる事も多いんですね。勿論、同じ職種でも各工房によって個性は有るので、全然雰囲気の違う作品に仕上がりますけどね。

と、こう書くとほとんど全ての職人仕事を切り尽くしたような感じですけど、まだやってない職種はいっぱいあるのです。傾向としては布関係が多いかな。テキスタイルとかレース編みとか。フィレンツェを離れれば、その土地の名物職人はいくらでもいるので、まだまだネタには困らないですけどね。

で、ともあれ銅版画の職人さんですが、このお店はけっこう有名みたいで、ガイドブックに取り上げられてるのを見て知りました。だから、この方の工房も飛び込みの取材。いやー、緊張した。実際、私の説明の仕方が悪かったのか、一度は断られたんですね。でも、めげずに話を続けたら許可を貰えました。今回はこういうパターンが多くて、ステンドグラスの工房も同じ経緯でしたね。

と言う訳で、銅版画です。エッチングとも言いますね。私は中学2年生の時に美術の時間で習った事があります。銅の表面を防食剤でコーティングして、その上からニードルで引っ掻いて線を描きます。次に酸に浸して、引っ掻いた部分(つまり防食剤でおおわれていない部分)を浸食させる。この部分が窪みになるので、インクを入れて印刷するわけですね。

一つの版を150枚使って刷ります。色を付ける場合は水彩絵の具を使うそうです。

取材させてもらったのはニードルで描画して行く場面。このニードルはジャンニさんの手作りで、市販のシャーペンに針を仕込んだ物。銅版画職人としては、この場面が一番面白いかな。

・・・しかし、取材させてもらったけど、これを切り絵にするにはどうすれば良いのだろう。針で描画するって、物凄く細い線なんだけど。それこそ髪の毛よりも細い!ジャンニさんも取材させてもらった時は、けっこうノリノリで「いつ作品にするんだ?」と期待してくれてるみたいだったし。「えーっと、来年イタリアに来る時までには・・・。」と答えちゃったから、何としても作らなきゃいけないんですけどね。いやいや。困った。まあ、何とかやってみるさ。

717

これは上の画像で作ってる銅板の下絵。ペンで描いてあります。ヴェッキオ橋とヴェッキオ宮、ドゥオーモとジョットの鐘楼、ちらっとパディア教会とバルジェッロ博物館が見えます。実際にはあり得ない構図ですね。ジャンニさんのファンタジーです。

ジャンニさんは独学で銅版画の技術を習得されました。10年ぐらい前に工房を立ち上げたんだそうです。ちなみに工房の屋号であるイッポグリフォとは、グリフォンと雌馬の間に生まれたという伝説の生物ですね。グリフォンってのは鷹の頭と翼にライオンの体がくっついてるやつ。イッポグリフォは下半身が馬になってるやつです。ジャンニさんは子供の時から、この伝説の生き物が好きだったそうです。

1074

こちらは帰国前日に自分へのお土産に買った作品。奮発して2点♪海老とイワシですね。額装しなきゃね。(長岡京の個展前に額縁屋さんに行ったけど、注文するのを忘れた。それどころじゃなかったんだよなあ。)

| | コメント (4)

より以前の記事一覧