2007年7月 7日 (土)

今年のフィレンツェ滞在のまとめ。

制作が忙しくて、しばらくブログを書く時間がありませんでした。10月に名古屋で個展があるので、それまでのノルマを計算すると・・・目一杯頑張っても8日程オーバーしそう。どこかで8日分無理しないといかんわけですな。はあ・・・。遊んでる暇は無いや。

2007年イタリア滞在記もまだ簡潔してなかったんだよなあ。もう一ヶ月も過ぎちゃったのにねえ。やれやれ。

で、久々のブログでこういう話を書くのもなんだけど、今回の滞在で避けて通れなかった話です。上手く考えがまとまらなかったんでブログの更新が遅れちゃったわけですけどね。

5月の滞在で、以前切り絵にした職人さんが病気になってたという話を聞きました。もう職人仕事は出来なくなったんだそうだ。すごい作品を作る方だったんですけどね。彼自身も周りの人たちもすごくつらいみたいです。こういう話を聞くと、自分の無力さを痛感しますな。何も出来ることは無い・・・。

まあ、私に出来る事と言ったら切り絵を作る事だけです。「変わり行くもの」、「移ろいやすいもの」だからこそ輝いてる瞬間がある。絵を描くという作業はその瞬間を切り取るという事だと思います。日々、真摯に仕事に取り組んでる方々をモデルにさせてもらってるんだから、こちらも気合を入れて作って行かなきゃ。一期一会。次のチャンスは無いものと思って、目の前の作品に全力を尽くす。

と、これが今回の滞在の結論です。気合を入れ直して頑張りますか!!

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2007年6月26日 (火)

ギンヤンマとカブトムシ

Img_3477 今日はすごく蒸し暑いですね。耐えられなかったので扇風機を使ってます。

さて、2007年のイタリア滞在記ですが、滞在中は暑い日が続いてました。ほとんど半袖で過ごしていたのですが、帰国する3日前に急に天気が悪くなって、コートが要るほど寒くなった。そういえば昨年も帰国する前日が雨が降って寒かったっけ・・・。帰国する日は天気は良くなってましたが、その後もしばらくフィレンツェは雨が降って寒い日が続いていたらしい。

で、あの日、雨に打たれて弱っちゃった昆虫が引っ繰り返ってる事が多かったみたいで、普段見かけない昆虫を拾いました。画像は日本のギンヤンマにそくっりな大型のトンボです。フィレンツェの南の方はローマ門から10分も歩けば丘陵地帯になってて自然が残っているので、こんなのが生きている。もっとも瀕死の状態だったみたいで、引っ繰り返ってもがいていたんだけど。・・・写真を撮った後、葉っぱの上に乗せておいた。

日本でもギンヤンマなんて捕まえた事が無かったんですがね。

1_1 そして、同じ日にローマ通りを歩いていたらカブトムシを見つけた!完全に街中なんだけど、フィレンツェにはプライベートの庭園が点在しているので、そういう所に住み着く事があるらしい。やっぱりこのカブトムシも雨に打たれて弱ってたみたいで引っ繰り返ってた。最初なんだろうと思ったんですよね。拾い上げてみると角があるので、これはスカラベか?と思いました。スカラベってのは糞ころがしの事ですね。牛や馬の糞を丸めて、安全な所に運んで中に卵を産み付けるやつ。これも一度見てみたいものです。雨に濡れて泥だらけだったので洗おうかと思いましたが、もうすぐ死んじゃうのに洗うのはかわいそうだなと思い直して、こいつがやって来ただろうと思われる庭園に放り込んでおいた。私有地なので入る事は出来ないのです。よって写真は無し。マウスで描いてみました。背中に角が2本、大きい角は日本のカブトムシみたいに枝分かれしてなくて、スッとまっすぐにとんがってる。体長は5cmぐらいですか。日本のカブトムシの半分ぐらいですね。どうやらこいつが「ファーブル昆虫記」にほんのちょっとだけ記述がある「オウシュウカブトムシ」なのではないかと思う。

こういうのを捕まえると「ラッキー♪」と思います。一日気分良く過ごせる。

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2007年6月24日 (日)

製本職人、エンリコ・ジャンニーニ(後編)。

Img_3167 さて、前から名前は知っていたけど、きっかけがつかめずに知り合うチャンスが無かったジャンニーニさん。偶然通りかかった小さい工房で見かけたので、思い切って声をかけてみた。

「ピッティ宮殿の前にある本店は娘さんに任せて、自分はやりたい仕事だけをやるために工房を借りた。」だそうです。理想の働き方ですね。この時は結婚式用のアルバムを作ってました。赤い革で装丁された豪華なアルバム。

自己紹介して、写真を撮らせてもらいつつ、しばらくの間お喋りをしましたが、話しているうちに嬉しくなってきた。職人としての技量はもちろん、その人柄の良さに感銘を受けました。おだやかでユーモアがあって知的で親切。

職人としてだけでなく人間的にも理想の男ですな。もし私が切り絵の道を選んでない状態だったら、その場で弟子にして欲しかったぐらいです。

いや、もちろん今まで知り合った職人さんの中にも素晴らしい方はたくさんいるし、欠点は多くても一緒に飲みに行ったり、議論したりしているうちに、その欠点さえ愛嬌に思えてくるような事もあるのですが、この方の場合はどこか別格の印象がありました。何と言うか、小柄な人なんだけど、巨大で緑豊かな岩山を目の前にしているような気がしました。

偶々、私が訪れた翌日に、アメリカ人の観光客にマーブルペーパーの制作の実演を見せると言うので、私も混ぜてもらいました。この時に作られたマーブルペーパーは、帰国する前に挨拶に行ったらプレゼントしてもらった。今までいろんな人からプレゼントを貰っているけど、完成した切り絵を見せに行ったら喜んでくれて何かくれたというパターンであって、まだ何も作ってないのに物をもらうというのは初めてでしたな。

結局、職人仕事というのは、その人の人柄が表れる。単に手を動かすのではなく、日常生活の中で何を考え、感じ、行動するか、こういった人間としての修行をしていかなければならないという事だ。そしてその修行は決して苦しい物ではない。エンリコ・ジャンニーニさんのように楽しく誠実に過ごしていればそれでいい。

と、まあこんな事はだいぶ前から私の師匠に「心に余裕を持て。」と言われてた事ですけどね。でも時々忘れてる事もあるので、再確認できたかなって感じですな。

以上、今回取材してきた7人と前回の取材でやり残した2人、合計9人をこれから作って行きます。

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2007年6月22日 (金)

製本職人、エンリコ・ジャンニーニ(前編)。

Img_3484 7人目の職人紹介、製本職人のエンリコ・ジャンニーニさん。

フィレンツェに関する職人の本は、主要な物で現在3冊出ていますが、その3冊全部出ているのがブロンズのバンキさんと、このジャンニーニさん。かなり高名な職人さんでして、店はピッティ宮殿の前にあります。ただ工房は2階にあって普通見る事は出来ないし、1階のショップは普段観光客で一杯なので少々取材の依頼をしにくい。また製本だけでなくフィレンツェペーパーという紙とそれを使った文房具も制作してまして、そちらの方がむしろ有名なのですが、このフィレンツェペーパーを切り絵でどう表現するかが問題だったのです。

フィレンツェペーパーというのは、墨流しの要領で海草で作った糊を溶かした水に絵の具を数滴たらし、針や櫛でチョチョイと模様を描いて紙をあててローラーで巻き取ると出来る。下の写真がフィレンツェペーパー。これは孔雀の羽のような感じですね。この他にもいろんな模様があって、大理石のような模様も出来るので、別名をマーブルペーパーとも言う。

Img_3314 さて、敷居の高かったジャンニーニさんの工房ですが、昨年に切り絵にしたバイオリン職人さんの工房へ行く途中の路地の小さい工房でこの方が仕事をしているのに出くわした。表札を見ると高名な「エンリコ・ジャンニーニ」とある。ピッティ宮殿の前の店にいるはずのジャンニーニ氏が何故?と思いつつ工房の扉をノックした。

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2007年6月20日 (水)

椅子職人、ぺトラルキ父子。

Img_3111 6番目の職人紹介。父親のシルバーノさんと息子のアレッシオさんの2人で働いてる職人さんです。壊れた椅子の修復の他、オリジナルの椅子も作る。

工房の前を通りかかったら、偶々すごく良い場面に遭遇したので、飛込みで写真を撮らせてもらった。(この画像ではない。)まあ実際に切り絵にする時は少し構図を変える必要がありますが・・・。

この工房、ピッティ宮殿の近くにあります。あの辺は私が切り絵にした工房が多いので、よく通るのですが、ずーっと見落としてました。昨日のブログに書いた「作家としてやって行ける職種」ではないので確かに地味ですな。しかし、私が見た一場面は明らかに輝いていた。多分この方々の日常をよく見てみれば、理解できるはずなのでしょうが、私も忙しく動き回っていたので心の余裕が無かったもかも。一見何でもない風景でも、そこから素晴らしさ・美しさを汲み出す仕事をして行かないといけませんな。

お父さんの方はもう引退していて、時々しか工房には出ません。後日、息子のアレッシオさんが「まだまだ親父から学ぶ事はたくさんある。一緒に仕事をしてると、そう強く感じるよ。」と言ってました。彼は現在35歳。15歳の時から修行を始めて20年になるけど、まだまだ奥の深い世界だそうです。職人としては若手ですが、これからも実のある仕事を続けていってほしい物です。

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2007年6月19日 (火)

金箔職人、ルチアーノ・カリエリ。

Img_3198 職人紹介5人目。金箔職人のルチアーノ・カリエリさん。木製の額縁や宗教画が描かれた十字架なんかに金箔を貼る職人さんです。13世紀より伝わる技術。画像は宗教画が描かれた十字架に金箔を貼った後、タールを塗って汚し、アンティークな雰囲気を出している所。

この工房も20年ほど前までは繁盛してて、10人の職人が働いていた程だったんだけど、需要が減った為に現在はルチアーノさん一人で働いてます。中央市場近くのすごく小さい工房・・・。うっかりすると見落としてしまうような場所でした。

ルチアーノさんはもう76歳。そろそろ引退を考えているそうです。消えつつある職人さんの仕事の場面に立ち会えた事は、運が良かったと思うと同時に寂しさも感じます。

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2007年6月18日 (月)

モザイク職人、ロベルト・マルッチ。

Img_3578 職人紹介4人目、フィレンツェ式のモザイク職人ロベルト・マルッチさん。工房ではモザイク教室も行っているので「マエストロ」と呼ばれています。教え方は上手いし、腕も良いのですが、商売する気が全然無いので自分の店は持ってません。まあ向き不向きはありますからね。自分の作品としてモザイク屋さんに置いて売ったり、大工房の下請けで制作したりしてます。こういう方がいるからフィレンツェの職人界も層が厚いのかも。

私の語学学校時代の友達が、モザイクの修行をしていたので、8年ぐらい前から知ってました。昨年ぐらいから、この工房の関係者や卒業生と知り合う事が多いので、今回の滞在でも頻繁に遊びに行ってました。

さて、マエストロ(私はモザイクを教えてもらったないんだけど、周りがこのように呼んでいるので私もマエストロと呼ぶ。)は来年のコルシーニの職人展に出品するんだそうです。今年の職人展でも弟子を連れて見に来てくれました。良い機会なので担当者を紹介した。カテリーナさんという方なのですが、私が引き合わせた時、「10日ぐらい後に連絡を・・・。」と言う話をしていたら、マエストロがいきなり

「あんた魚座?」

と何の脈絡もなくカテリーナさんに聞くのでものすごく焦りました。マエストロは星座マニアなので、他人の星座が気になるらしいのです。星座好きという事は知ってたけど、まさか初対面の人と仕事の話をしている時に突然聞くとは思わなかった。カテリーナさんもかなり面食らったみたいで

「はあ?」

と不審そうな顔をした。慌てて説明をしたのですが、変な人を紹介しちゃったかなあ・・・。まあ、職人さんは変わった人が多いけどさ。(だから面白いのですが。)

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2007年6月17日 (日)

陶芸家、ニコレッタ・マラボルティ。

Img_2848 職人紹介3人目は陶芸家のニコレッタ・マラボルティさん。この方は昨年に切り絵にした陶芸家のロマーノ・パンパローニさんと一緒に働いています。工房として皿や壷などを制作される傍ら、陶芸教室も開いています。ロマーノさんはろくろを、ニコレッタさんは絵付けを担当しています。

彼らの工房もコルシーニの職人展に毎年参加されています。今年、うっかりしてて彼らと一緒に写真を撮らなかった事が悔やまれます。

昨年ロマーノさんが切り絵のモデルになってくれたお礼に和菓子の詰め合わせを持っていったら喜んでくれまして、職人展の最終日にプレゼントをもらいました。開けてみたら陶器の薔薇が入ってました。すごい繊細な色でした。後で取材の時に聞いたのですが、これは色付けだけでなく、最初から最後までニコレッタさんが作ってくれた物なんだそうです。

最初ロマーノさんの奥さんだとばかり思い込んでいたのですが、単に一緒に働いてるだけなんだそうです。なんだ。・・・いや、すごく綺麗な人なので「いいなあ、ロマーノさんは・・・。」と思っていたのですけどね。服装もすごく品が良いので「貴婦人」って形容がピッタリ来るような方です。でも陶芸家としての職歴は20年(ロマーノさんと一緒に働いてるのは8年だそうです。)ベテランの職人さんですな。

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2007年6月16日 (土)

バイオリン職人、パオロ・ベットーリ。

Img_2912 2002年に切り絵にしたバイオリン職人、カルロ・ベットーリさんの5歳年下の弟、パオロ・ベットーリさん。彼の工房で制作されるバイオリンは現在日本でも評判が良いそうで、以前から気になっていた職人さんです。

昨年の10月、私のホームページを見た方からメールをもらいました。その方の娘さんがパオロ・ベットーリ制作のチェロを買ったとかで、彼の工房の切り絵もあったら良いなというリクエストでした。

じゃあご期待に応えましょうかってんで、取材を申し込みました。ベットーリさんも自分の制作した楽器を買った人からのリクエストなので、喜んで引き受けてくれました。

こういった経緯があると、職人さんの方でも協力し甲斐があるみたいですね。最近はコピー商品を作る中国人を警戒して取材を断る職人さんもいるし、私のやってる切り絵自体がよくわからないので、あまり興味を持てないから協力してくれない職人さんもいます。まあ、そういった職人さんでも、実際仕上がった作品を見て心を開いてくれる事もあるので、それはそれで嬉しいんですけどね。勿論、協力的であるに越した事はないのです。いろんな情報を持っていれば、より深い世界観が構築できる。

だから「この職人さんの切り絵作ってください!」ってリクエストは大歓迎ですので。(ただしイタリア限定。)いつ制作出来るかわからないけどね。

ベットーリさんの工房では家族全員でバイオリンの制作をされています。奥さんと息子さん2人と娘さん。私が取材に行った時は息子さん2人は海外へ出張中で会えませんでした。何度か日本にも楽器の展示会で来ているそうです。そのせいか社交的な一家でしたな。

「オレは生後8ヶ月の時に赤ちゃんコンテストで優勝したことがある!」なんて、どうでも良い情報まで教えてくれました。

今年の11月にも楽器の展示会で来日されるそうだから、その時までに作品を仕上げて見せれると良いな。・・・しかし、今年は10月に名古屋、12月に東京で個展をやる予定なので、スケジュールが詰まってるなあ。ハードな秋になりそうだ。

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2007年6月15日 (金)

手袋工房、マドバ。

Img_2953 制作の方が一区切り付いたので久々にブログを。今回から今年制作する予定の職人さんの紹介をします。

まずは手袋の工房「MADOVA」。ベッキオ橋の近くに店があります。昔私が住んでいた家の近くなので、店の存在は知っていましたが、販売しているだけなので工房はどこにあるのか謎でした。

今回の滞在で偶々、日本のデパートの方と知り合いました。最近はどこのデパートも年に1回はイタリアフェアをやるみたいで、その方もいろいろ職人さんの工房を回られてました。「良ければ手袋のマドバの工房に一緒にどうですか?きっと絵になる工房だと思うよ。」と誘ってもらったので、喜んで同行させていただきました。

マドバの工房は建物の中にあります。通りからは見えないわけだから、誰かに紹介してもらわないと知り合う事は不可能ですね。で、工房がどこにあったかと言うと、昔住んでいた家の真下でした。・・・同じ建物。「ここです。」と連れてってもらった時、ずっと出入りしていた扉だったのでビックリしました。工房のスタッフの方に「あなた、見た覚えがあるわね。」と言われました。

・・・ううむ。灯台下暗しとはこの事ですな。と言うか、不覚!下の階に工房があるという事に3年半も住んでいながら気が付かなかったなんて粗忽もいいとこです。これからは常にアンテナを張っておかないとな。

画像はマドバ工房の2代目、セルジオ・ドンニーニさん。現在74歳。14歳の時から職人仕事を続けているので60年の職歴。フィレンツェの職人の中でも長老クラスですね。画像は手袋の革を打ち抜く機械に型をはめている所。彼の傍らには奥さんがいまして、打ち抜かれた革をミシンで縫っていきます。気さくな方々なので、一通り手袋の作り方を教えてもらいました。手作りの手袋だと大変な手間と神経が使われている事がよくわかりました。

彼らは11月に大阪のデパートのイタリアフェアに出店するそうなので、それまでに作品を仕上げて見せに行こうと思ってます。

ちなみにこの店の創始者は3人いまして、それぞれの姓の頭文字を組み合わせたものが屋号の「MADOVA」になったのです。しかし「MA」と「VA」はその後引継ぎがいなかった為に消えまして、現在では真ん中の「DO」、ドンニーニ家のみがこの工房を続けているそうです。

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