イタリアの地震

ソーセージ工房の様子。カポ・コッロという、豚肉の首の部分で作るソーセージ。豚肉に塩と黒胡椒、ウイキョウを混ぜて(オレンジの皮を入れる事もあるそうです。)乳牛の腸に詰めていく。一頭の豚から2つのカポ・コッロが出来るんだそうです。
4日のブログで「フィレンツェのホームレスの切り絵、作ります!」と宣言して、早くも月末。かなり悩みまくって制作してます。変な所にこだわったりすると、なかなか進まないんだけど、ある時にストンと納得出来る答えが見つかったりする。悩んでる時間って、けっこう贅沢な時間の過ごし方だと思います。
さて、今日までの進行状況。
サイズ、60×80cmで作ります。画像は下絵終了した段階。ホームレスのおじさんが眠ってるところ。この時点でタイトルは決まってます。
Il sogno ~夢~
と言います。
全て切り抜いて、裏側から撮影しました。(この方が線が分かり易いので)
いつもなら、この後エアブラシで黒い絵の具を吹き付けて真っ黒にするんだけど、今回は更にもうひと手間かけました。
子供の落書と大人の落書を切り絵にして、画面全体に貼り込む。
これは2013年に制作したパイプオルガン職人の切り絵。サイズは今回と同じ60×80cm。この作品の楽譜の部分は別の紙を切って、黒い線と台紙の間に挟んであります。半透明の切り絵が挟んであるように見えるわけですね。この技法を今回も使おうかと思ってます。
こちらは子供の落書。右上のはドラゴンボールの悟空みたいですね。髪型や表情など特徴を良くつかんでいる。その横はメドゥサかな。ギリシア神話に出て来る髪の毛が蛇の女怪物ですね。カラバッジョのメドゥサが元ネタかな。
こちらは大人の落書。下品なのが多い。子供・大人の落書ともにフィレンツェに住んでた頃に町を歩いてて、見つけてはスケッチブックに模写してました。どうも落書とか好きで、トイレの壁に描いてあったりすると、つい真面目に見ちゃうんだよなあ。(勿論、公共の建物に落書するなんて、絶対にしちゃダメなんですけどね。それはそれとして・・・。)
で、これが落書を貼って、エアブラシで真っ黒にした段階。いや~何が描いてあるのか自分でも全然分からない。
これをすっきり見やすくするのに持って行くのは大変だ。
パイプオルガン職人の時も大変だったんだよなあ。あまりの難しさに挫折して1ヶ月以上放置したんだった・・・。でもあきらめなければ、いつか答えは見つかるもんなんだよな。今回でこの技法は2回目なので要領は分かってるんですが・・・。悩むこと自体はけっこう楽しいもんだと思ってます。
おまけ。今回の作品のルーツです。
なんと、20年も前の作品でした。フィレンツェに住み始めてもうじき一年って頃に作った作品です。サイズは65×50cm。タイトルは「汚れた世界」。
とにかく徹底的に下品で汚い世界というテーマで作りました。う
この頃はまだ色を使えなかった。せいぜい作品のイメージに合った色画用紙を貼る程度ですけど、台紙となる水色の画用紙に切り込みを入れて、裏から別の色の画用紙を貼ってある。徐々に工夫をしてたんですなあ。
・・・いや~、何か若いよね。精一杯、毒気を出そうとしてるみたい。
でも、これはこれで良い作品だと思ってます。10年後、20年後に今の作品を見て、どんな風に思うのかなあ。
度々、このブログで紹介した作品です。
タイトルは「現役職人と退役軍人」。家具修復職人のダリオ・ブラッツィーニさん。サイズは60×80cmです。
漂白剤で家具のニスを落としているところです。家具の脚の部分はダリオさんが新しく作った部分で、白木のままです。全体を白木の状態に戻してから、改めてニスを塗りなおすと色調が統一されるんですね。
左の人物は退役軍人のマルチェッロさん。暇だからいつも工房に遊びに来ている。ほとんど、この工房の付属品みたいな感じです。
ダリオさんとは近所で革細工の工房をやってるジュゼッペ・ファナーラさんの紹介で知り合いました。今日、ジュゼッペさんに用があったので電話したのですが、挨拶して一通り近況報告を済ませたら「ああ、悪いニュースがあったんだ・・・。」といつも陽気なジュゼッペさんが沈んだ声。ダリオさん、5月頃に亡くなられたんだそうです。
何年か前に年金生活に入るから、工房は閉めたんですよね。でもシャッターは閉めてるけど、中でこっそり働いてる事が多くて、時々見かけたりして一緒にコーヒーを飲みに行ったりしたんですけどね。
そういえば今年の3月のイタリア滞在では会わなかったな。肺癌だったそうなので、その頃にはもう調子が悪かったのかもしれない。
最後に会ったのは2年前でした。工房の前で立ち話をしてる所に通りかかったので挨拶したんだっけ。丁度、その滞在での取材は全部終わった後で「さあ、あとはフィレンツェを楽しむぞ!」って気分だった。私が声をかけた拍子に、それまでダリオさんと話してた人が「じゃあ、また。」と言って、向かいのブロンズの工房に入っていったので「今の人、ブロンズの職人さんですか?」ってダリオさんに聞いたんだった。ジーッとブロンズの工房の方を見てたら、ダリオさんに「お前、もう取材全部終ったんだろ?仕事の事は忘れてノンビリしなよ。」と言われた。穏やかな人だったな。
小鳥が好きな人だったな。工房にセキセイインコのつがいが居て、卵を産んで雛鳥に育てて、ある程度大きくなったら人にあげてた。
次にイタリアに行く時に、遺族の方に会いに行こう。
一気に完成させました。 ヴァチカンのサン・ピエトロ大聖堂の中にある、ミケランジェのピエタです。切り絵のサイズは15×15cm。
ピエタというのはキリストの亡骸を抱く聖母マリアの像の事です。ミケランジェロは4つのピエタの像を作ってるんだけど、このピエタは24歳の時から2年かけて作られたものです。ミケランジェロは人として、芸術家として苦しみながらも傑作を世に送り出し続けたのですが、ピエタに関しては、若い時に作られた、このサン・ピエトロのピエタが一番評価が高いですね。(と言うよりも他の3つは未完成のまま残されているのですが。)
今回、フィレンツェの料理人のサスライシェフさんがカボチャの彫刻コンテストで彫ったカボチャのピエタに触発されて、発作的にやっちゃいましたが、やっぱりミケランジェロの彫刻は良いですねえ。この作品、東京の個展にも出しますんで、見に来て下さいませ。
で、せっかくなので、フォトショップを使ってちょっと遊んでみました。題して「切り絵のピエタ、カボチャ色バージョン」です。
・・・こんな感じになるんでしょうかね。なんか甘くて美味しそう。
サスライシェフさんのカボチャのピエタはコンテストの後、彼の働いてるレストランにしばらくの間、展示したんだそうです。最近、友達が食べに行って実物を見たってメールが来ましたな。すごかったって感動してました。私も見に行きたいとこなんですがねえ。彼の料理も食べてみたいし。流石にフィレンツェは遠いな・・・。
最近は猪が美味しいんだそうです。良いですねえ、食欲の秋。
さて、もう1点、チンクエテッレの風景が残ってたな。こっちの方が色数が多いだけ大変だったりする。頑張ってギリギリ東京の個展に間に合うかな。
おまけ
ミケランジェロはピエタを24歳の時に作り始めたのですが、私は24歳の時にフィレンツェに住み始めて、25歳の時に切り絵で食べて行こうと決心しました。その時に作ったのがこの作品です。
タイトル「オリーブと聖母子と狼と」 サイズは65×50cm。黒い紙を切って、裏から1枚の色画用紙を貼っただけの一番シンプルな技法です。
赤子のキリストだからピエタではないけど、テーマとしては通じる物がある。
・・・まあ、ミケランジェロとは比較の対象にもなりませんな。この作品がイタリアに入って初めての作品です。今の自分が見ると「よくもこの程度の腕で食って行けるなんて思えたもんだ。」と若気の至りを微笑ましく思います。
とは言うものの、思い入れのある作品ですからね。私の原点はここにある。
えー・・・私のエアブラシ、修理が終るのが2週間後だって。嗚呼!
まあ、他にもやる事はあるから良いんだけどね。エアブラシ無しでもやれる仕事、新作の下絵と切るとこまでは終らせておこう。そう考えると2週間ぐらいはかかりそうなんで、今はエアブラシが無くても困らない。
画像は押入れから発掘した作品。切り絵ではないですよ。21歳の時にペンと水彩絵の具で描いたタロットカード。流石に今の自分が見ると稚拙ですが、とりあえず頑張って描いたなあって事は覚えている。
これをデザインする前にエジプト旅行をしました。パック旅行でトルコとギリシアも行ったんですけどね。あれが初めての海外旅行。えらい楽しい思いをして帰って来たんで、それ以後もアルバイト代を海外旅行につぎ込み、卒業旅行で立ち寄ったイタリアに住む事になるとは当時は想像もしませんでしたな。
エジプトも面白い所でしたよ。ごはんも美味しかったし。ハトを初めて食べたんだったなあ。
未公開の作品は今回で終了です。2005年制作、シエナのミッレミリアシリーズの後半です。この翌年はナポリの風景シリーズで、この後からイタリアの主要都市を小サイズで切り絵にして行く事になります。ナポリの次はフィレンツェの風景(2007年)をやりまして、今年はトリノの風景シリーズを11月・名古屋の個展にて展示予定です。
サイズは1、2が15×20cm、3が15×15cm、4、5が10×15cmです。このシリーズ15点の内、11点を公開しましたが残りの4点についてはHPの方で公開していますので、よろしければこちらからどうぞ。
シエナはフィレンツェから公共の交通機関を使って1時間程度で行けるんですけど、この辺り(トスカーナ地方)は風光明媚で遠足には丁度良い所でした。
ずっとイタリアの職人シリーズをメインに、小さいサイズの風景画はあくまでも大作の合い間の気分転換のつもりでしたが(とミニシリーズを始める前は思ってましたが、実際はかなり本気で作っているので気分転換にならない!)たまには大きい風景画をやりたいなと思います。切り絵にしたい場所はたくさんあるんだけどなあ・・・。
今回は2005年制作のミニシリーズ「シエナのミッレミリアシリーズ」15点の内の5点です。「何だ、またミッレミリアか。」って感じですな。2年前のミニシリーズで19点も作りましたからねえ・・・。私自身、何か良い題材は無いかと迷っていた時期でした。次のミニシリーズでは再び「骨董市シリーズ」をやろうかと考えていたぐらいです。結局はナポリの風景でミニシリーズを続けたんですけどね。その後はイタリアの主要都市をやって行く事に決めたんですけどね。
で、シエナですが、フィレンツェから電車かバスで1時間ぐらいの所にある町です。フィレンツェ同様に町全体が世界遺産に指定されているぐらい美しい町で、とりわけ町の中心であるカンポ広場は「世界一美しい広場」と言われています。すり鉢状に傾斜した扇形の広場の周辺を市庁舎や鐘楼など、中世の建造物が並んでいます。
この町もミッレミリアの通過地点でして、サンセポルクロのように、民族衣装を着た町の人が車を出迎えるというような事はないんですけど、町並みの美しさでは郡を抜いてますし、ミッレミリアを描くには丁度良いと思ったので(フィレンツェのように大きい町だと、ミッレミリアは絵にならないと思います。)2005年のミニシリーズに選んだのです。
ただ肝心のカンポ広場を描くにはミニシリーズではサイズが小さすぎて出来ませんでした。いつか挑戦したいものですね。
2番目の画像はカンポ広場から出て来た場面です。中央にそびえるのは「マンジャの塔」です。高さは102mあります。
ミッレミリアをシエナまで見に行った時に友達の彼女と同行しまして(あまり面白くはないなあ・・・。)写真を撮りまくって来たのですが、この方にも写真を提供してもらいました。3番目の画像は私ではなく友達の彼女が撮った写真からデザインしたものです。なかなか渋いドライバーですな。こういう写真を撮るっていう発想が無かったので、私以外の人が撮った写真も役に立ちますね。他の人の視点ってのも重要です。
作品のサイズは1と3が10×15cm、2が15×20cm、4と5が15×15cmです。
出しそこなってた作品の公開を続けます。
2004年制作「アレッツォの骨董市シリーズ」の後半6点です。
HPの方にも骨董市シリーズが3点公開しているので、そちらも御覧下さいませ。
サイズは1と2が10×15cm、3と4が15cm四方、5と6が15×20cmです。
アレッツォの骨董市は毎月第一日曜日にやってるんですが、フィレンツェでもサントスピリト広場で第3日曜日に、チョンピ市場で第4日曜日にやってます。(ちなみにサントスピリト広場ではたしか第2日曜日が自然食品の市が出てますね。)全部の骨董市に共通で出てる屋台も多いんだけど、アレッツォの場合は町全体に屋台が出るので規模が大きいのです。
だから飽きずに何度も通いました。このシリーズを作るために写真を撮りに行ったのは前の年の5月でしたが、6番目の画像の作品だけは昔撮った写真からデザインしました。その時は秋も深まりつつある季節だったので、ちょっと雰囲気が違うのです。
そういえば、ある時カメラ抱えて骨董市を歩いてたんですが、高台になってる所で一休みしていたら、屋台の間を修道女が歩いて行くのを見つけまして、「こりゃ絵になる!」と思って慌ててカメラを取り出そうとしたら、すでに通り過ぎていたって事がありました。常にカメラを持ち歩いてるけど、それでもシャッターチャンスを逃す事はあるんだよなあ。
さて、今月も下旬に入ったので個展の案内状を書いてます。昨年は400人もの方が記帳してくれてるんで、全員に出そうとすると大変です。100枚も書くと手が疲れちゃいますね。
個展まで1ヶ月を切りました。まだ案内状も書いて出さなきゃいけないし、新聞社に宣伝に行かなきゃならない。なにより作品が揃わないので大変です。 まあ、でもこういう状況って燃えるので好きですね。
今日は所要で駅前まで出ました。昼間から花火が上がってるなあと思ってたら、今日はお祭の日でした。「豊田挙母祭」ですね。祭囃子と共に山車が引かれて私の目の前を通って行った。
一番上の画像がその山車を切り絵にした作品です。1998年制作、サイズは40×30cmです。地区ごとに山車が出るのですが、なかなかの迫力です。それぞれ違う模様の刺繍が施されてるんだけど、私が描いたのは平家物語の屋島の戦いで那須与一が扇の的を射る場面ですね。 こういうの描いてて楽しい。
画材を買いにホームセンターに寄ったら、クリスマスツリーが売られていた。もうそんな季節ですか・・・。しかし、今日は暑かったので、自転車で走り回っていたのですが、半袖シャツを着てたんだがなあ。この季節感の無さは何なんだろう。地球温暖化の危険性が叫ばれて久しいけど、あきらかに変な状況を体験すると、地球の未来は大丈夫だろうかと本気で不安になる。
さて、話は変りまして、出しそこなっていた作品の公開を続けます。今回は2004年制作の「アレッツオの骨董市シリーズ」から。15点の内の6点です。
アレッツォはフィレンツェから電車で1時間の所にある町で、毎月第一日曜日に骨董市が開かれます。城壁に囲まれた古い町の全てが、市場になるという大規模なもので、売られている物も家具や額縁、食器、陶磁器、本、藤製品、絵画、宝箱、楽器、おもちゃ、カメラ、時計、じゅうたん、宗教用具、タイプライター、古い絵葉書と、およそ考え付く限りの物が売られています。中には「こんなの売れるの?」って感じの物もあります。そういえば別の骨董市だったっけど、骨だけになった傘なんてのも売られてましたっけ。 (そんなの売れそうにないけど、同行してた私の師匠が何を思ったのか買ってしまった!後で奥さんに叱られたと言ってましたな。)
靴の制作に必要な道具で生産が中止になった物もあるので、靴職人の修行中の子たちは骨董市まで来て古道具を探してます。時々バッタリ会ったりしましたな。もっともこっちは遊びに来てたんですが・・・。
2番目から6番目の画像は10×15cm、最後の画像は15×15cmのサイズです。
一日見ていても飽きないし、フィレンツェからも近いので何回も遊びに行きました。お金無かったから冷やかしばかりだったけどね。 朝出かけて、広場でサンドイッチを食べて、日が暮れる頃までウロウロしてましたなあ・・・。
サンセポルクロのミッレミリアシリーズも今回で終わり。3点公開するので、19点のうちの16点を公開した事になります。残りの3点はHPに置いてありますのでよかったらどうぞ。
今回の3点はサンセポルクロの町の広場で見かけたものをデザインしてあります。その1で公開した古い型のバイクも広場に展示してありました。
1番上が15×15cm。制服を着てる2人は警察官ですが、仕事中に観客と混じってミッレミリアを見ている。イタリアの警察、仕事しないんだよね~。警察官の向こうにバイクが見えますが、このバイクはその1で公開したバイクとは別物。5台ぐらい広場に置かれてたな。
2番目は10×15cm。広場に藁を固めて作った椅子が円形に置かれてるんだけど、その周囲をクラシックカーが走って行く。紺色の服を着た女の子が、この日に見かけた中では一番綺麗だったので、とりあえず写真に撮っておいた。赤い服の人はおばさんだった。「あの日本人、あたし達を写真に撮ってるわよ。」とか喜んでたな。まあ、おばさんの方はどうでもよかったんですけど、ついでに・・・。
3番目は15cm四方。このジープも広場に展示されていた。マシンガンなんか付いてるけど、あれは本物だったんだろうか・・・。本当はアメリカの国旗が付いてたんだけど、そんなのを描いたらイタリアの風景のシリーズではなくなるので、省略した。老年期に入りかかった親父さんたちがジープの周りにたむろしてたけど「いくつになっても少年の心を忘れない。」って感じですな。なんだか鳥山明のイラストみたいだ。
次回からは2004年のミニシリーズを公開します。
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