ビーニ家の人たちと。
画像の写真は2003年にフィレンツェのコルシーニ庭園の職人展で撮りました。職人展はこの年が初めての参加でした。私の横にいるのは帽子の木型職人のロベルト・ビーニさん。ロベルトさんの横に、彼をモデルに作った切り絵が置かれています。
帽子の木型職人のロベルト・ビーニさんは2005年の夏に亡くなられたのですが、お葬式の後にこの写真が遺品の中から出て来て、興味を持ったロベルトの娘さんが作品を買ってくれました。
その時はロベルトさんの兄のルチアーノさんを通じて話をしたので、ロベルトさんの家族とは会ってなかったんです。
今回の滞在でやっと会うことが出来ました。フィレンツェの隣の市プラートに住んでいるのでルチアーノさんに連れて行ってもらいました。
ロベルトさんの娘のカルロッタさんの家に私の作品が置かれてました。作品と一緒にこの写真も飾られてました。ひょっとしてカルロッタさんに毎朝拝まれてたんじゃないかと思った。いや、拝んでるとしても拝まれてるのは父親のロベルトさんであって、私は無関係なんだけど、何か居心地が悪いですねえ。私、ここにいて良いのでしょうか?って感じで・・・。
その後、近所に住んでるカルロッタさんのお姉さん一家とお母さんも加わって夕御飯をご馳走になり、カルロッタさんのお姉さんの子供達(つまりロベルトさんの孫ですね。)とトランプして帰って来ました。何か、法事に親戚が集まってて、私も同席させてもらったような、そんな感じでしたねえ。
3代続いたビーニ工房も後継者がいないので歴史に幕を閉じました。ルチアーノさんも職人を辞めてしまったので、道具類はアフリカの恵まれない人たちの為にボランティアの団体に寄付されたんだそうです。
工房の終焉に立ち会って寂しい気持ちもありましたが、ビーニ家の歴史はまだ続いていくきます。ロベルトさんの孫は一番大きい子でまだ5歳なので、工房が元気だった頃は覚えてないだろうけど、もっと大きくなった時に私の作品を見て自分の家のルーツを感じてくれるかもしれない。「あんた達のお爺ちゃんは凄い職人だったのよ。」ってカルロッタさんが誇らしげに語ってるんでしょうね。一つの家の歴史に関わる事になっちゃいましたね。
考えてみれば不思議な縁で、今回初めて会ったロベルトさんの家族はおろか、ルチアーノさんとさえも、ロベルトさんの亡くなられた後に知り合ってるんですよね。あの作品を作った頃は、こういう場所まで運んでもらえるって想像もしなかったなあ。
多分、これからも多くの人たちが私の前を通り過ぎていく事でしょうね。そして、その度に私は人の想いの深さも背負っていく事になる。切り絵職人として、これほど幸せな事ってあるだろうか?
さて今回で2010年のイタリア滞在記も終わりです。レポート書くのに1ヶ月半もかかっちゃいました。いろんな経験を積んで来たので、ますます頑張って制作して行きます。今後とも切り絵師・俊寛をどうぞよろしく!
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