シャツ職人、レオナルド・ブジェッリ
シャツ職人のレオナルド・ブジェッリさん、4月の日本橋三越のイタリアフェアでも見に来てくれました。丁度、この時期に東京で受注会だったんですねえ。日本の展示会でモデルになった職人さんが来てくれたのは初めてでした。
以前に制作したブジェッリさんの作品の前で記念写真。よく分かんないポーズだ・・・。
これを作ったのは丁度10年前ですね。サイズは35×65cm。すごくシンプルなアトリエで切り絵にしにくかったので、ウインドウと生地が置かれている箪笥を左右に置いて、間にブジェッリさんの好きなグスタフ・クリムトの「ベートーベン・フリーズ」を描き込みました。今のアトリエにはクリムトの複製画は飾ってないけど、この当時のアトリエには飾ってあって、印象的だったんです。
仕上げてみると、私の職人シリーズとしてはちょっと変わった感じになりました。
で、10年前はブジェッリさんは長髪だったのですが、切り絵を制作したすぐ後で今みたいな髪形になりまして・・・。印象が変わっちゃって、似てないなあと思っていたので、再びブジェッリさんを作る事にしました。
実は今回、シャツもオーダーしました。初オーダーですね。私とて、たまにはおしゃれも楽しみたいのですよ。(普段はやる気の無い格好だしな。)滞在中に仕上げてくれたので、日本橋三越の時に来て行きました。ちなみにその時は靴はマンニーナ、名刺入れはジュゼッペ・ファナーラ、名刺を置く箱はファビオ・カパンニ、道具箱はレナート・オリヴァストリ、ブレスレットはパオロ・ペンコと、身の回り品が職人さんの仕事で固めちゃいました。ほとんど「歩く職人展」ですね。きちんとした物を身近に置くのは良い気分ですよ。
と言う訳で、切り絵の為の取材だけでなく、シャツの採寸から試着まで、ブジェッリさんのアトリエに居る事も多かったので色んな話をしました。昔からの知り合いでしたが、突っ込んだ話をしたのは今回が初めてです。
昨年の夏に亡くなられた、ブジェッリさんの親友の靴職人、ステファノ・ベーメルさんの話題も出ました。ほとんどコンビを組んで活動してた2人なので、彼らの職人仕事についての考え方等も聞けたのは嬉しかったですね。
ベーメルさんの想いも引き継いで行くように感じました。
ブジェッリさんは色んな職人さんとも交流がある人で、今回の滞在で取材した、額縁のマゼッリさんや、かつらのフィリストゥルッキさん、他にも彫金家のパオロ・ペンコさん(私の兄貴分ですね)、既に亡くなられましたが木型のロベルト・ビーニさん、そして靴のベーメルさん・・・。何人かとコラボもやってます。仕事の可能性が広がるので、私も良い人が見つかるとコラボしたりするので、ブジェッリさんの話はすごく共感出来ます。ただし、ブジェッリさんの方が何枚も上手ですけどね。
興味深かったのは、フィレンツェの画家でタラーニ氏って方の作品をネクタイの裏地にプリントした物。
タラーニ氏はまだ50代ですが、フィレンツェ中央駅の壁面に彼の作品が描かれています。生きた伝説みたいな芸術家ですね。
駅の西側の壁面です。風になびくネクタイが特徴的な作風。
ネクタイを見せてもらった時に聞いたのですが、ブジェッリさんの理想で「アートを着る。」という事。タラーニ氏とのコラボもその一環ですが、考えてみるとブジェッリさんのシャツは単なる服ではなく、何かの世界観の元に作られた作品のように感じる。生地やボタンなどは外注ですけど、全ての工程で監修を行っているので統一されているんですよね。
だとすると、10年前に制作した切り絵は、実にブジェッリさんに合った作品だなと思った。そのまま「アートを着る」ってタイトルで良いではないか。
笑いながら仕事をしてますが、ふざけてる訳ではなく「仕事とは楽しんでやる物」ってポリシーがあるからです。楽しんでやるからこそ、良い仕事につながる。心の余裕と器の大きさを感じさせる人ですね。こういう人を目指さなきゃなと思いました。まだまだ私も未熟ですが、上に目標となる人が居るという事は幸せですね。
今年のイタリア滞在記は今回で最後です。記事にするの長くかかったなあ・・・。
イタリア滞在中から、帰国してすぐの日本橋三越のイタリアフェア、大勢の人にお世話になりました。皆に助けてもらってるなあって感じる事が多かったですね。それだけ期待してくれてるという事なので、頑張って制作に励もうと思います。
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