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2010年4月13日 (火)

オレと靴屋と明日香と純子。

これはフィレンツェに滞在して3日目の話なんだけど・・・。

その日も職人さんの工房に挨拶回りをしてて、どこの店も閉まる時間になったので、そろそろ家に帰るかと駅の近くを歩いていた。ふと前を見ると、向こうから歩いてくる女の人が私の顔を見て絶句してるのに気が付いた。

「えっ、嘘・・・信じられない!カン?」

「・・・!! 純子かっ!!」

次の瞬間、オレたちは人目もはばからずに互いの名を叫びながら抱き合ってた。まだフィレンツェに住んでた頃、いつも一緒に遊んでた友達の一人。9年ぶりぐらいの再会かな。

7年間に渡るフィレンツェの生活だったけど、「靴屋と明日香と純子の時代」って名付けたいほどの時期がありました。今でこそ、たくさんの友達がいて、それぞれに良い関係を築いてるけど、元々は消極的な性格なので友達を作るのは下手でしたね。丁度、それまでバイトしてた日本料理屋を辞めた後。バイトとは言え組織から完全に外れて、自分の生活を自分でコントロールしなきゃいけなかった時期。制作したくないんだけど怠ける事には後ろめたさを持ってたので、何もやる事無いのにとりあえず家にいたり・・・そうなると当然、付き合いも悪くなる。まだまだ切り絵を通じて自分が何を目指すのか、それがわからなかったので不安定な時期でしたね。

そんな時期に、たまたま靴職人を目指してる男、通称「靴屋」と知り合った。彼が初めて知り合った職人仲間だったな。彼の紹介で明日香と純子とも知り合った。初対面の時に純子はブラックベリーのジェラートを食べてたな。その日の内に仲良くなって皆で中華料理を食べに行ったっけ・・・。

冗談を飛ばして皆からいじられて自分でも笑ってた靴屋。自分の事で精一杯過ぎたけど、誰よりもひたむきだったヴァイオリン弾きの明日香。目の覚めるような美人でテキスタイルをやってたノンビリ屋の純子。性格バラバラだったけど妙に馬が合った。この中じゃ私が一番年上で当時28歳。2歳ずつ歳が離れてて、靴屋が26歳、明日香が24歳。一番年下の純子は22歳だったな。

4人で近くの町に遊びに行ったり、一緒にご飯を作って食べたり、互いの作品の発表会に行って「オレも頑張らなきゃな。」と刺激を貰ったり、たまに喧嘩になったり・・・。

明日香がオレの部屋に来てヴァイオリンを弾いてくれた事もあったし、純子を連れて知人のイベントに行ったら「あんな凄い美人とどうやって知り合った!?」って騒がれた事もあった。夜中に待ち合わせて、ひたすら話をしながら街中を歩き回ったり。・・・何でもない、ごく普通の友達関係なんだけど、あの時期しか持つ事の出来ない「熱さ」があったような気がする。若かったのかな。

彼らとは2年間ぐらい一緒にいたんだけど、各々の生活もあって何となく疎遠になって行った。時々「あいつら、どうしてるかな・・・。」って思い出してはいたんだけどね。

しかし、まさか純子がまだフィレンツェにいるとは思ってなかった。感動のあまり「これで別れるなんて勿体ない!」って事で、すぐ近くのバールになだれ込んで食前酒を飲みつつ近況報告をして、住所を交換した。

輝くような美貌の純子も結婚して4年目。30代に入って、だいぶケバケバしくなって迫力が出てたなあ。(考えてみたら、彼女は化粧を必要としないぐらい派手な顔だった。)子供はまだいないので働いてる。仕事場も家もフィレンツェの中心部なので、今まで会わなかったのが不思議なくらいだ。

明日香はパルマのオーケストラに入ったけど、外国人って立場だからいろいろ苦労してるみたい。

靴屋は日本に引き上げて自分の店を出して、元気でやってる。

「晩御飯のしたくしなきゃ。」と言ってフィレンツェの夕暮れに溶け込むように帰って行った。遠ざかる純子の背中を見ながら、昔のオレたちが今のオレたちを見たらどんな顔するんだろうと思った。

「お前ら、必死でやってるけどさ、いま進んでる道は楽しい場所につながってるよ。」

しけた中華料理屋で互いに毒づきながらチャーハンをかっこんでる昔のオレたちに、出来るのならそんな言葉を贈ってやりたい。

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コメント

う、う、え~話や。。。。(涙)


10年後の自分、そして友達。。。。

若い時にしか感じられないこともあるし、今の歳になってからこそ感じられることもある。

ちょっとB'zのBrotherhoodのって曲おもいだしちゃいました。


いや、いい話や~

投稿: saraichef | 2010年4月13日 (火) 06時41分

若い頃の親しく戯れたりしたのは良い思い出となって寛さんの心にいつまでも残るでしょうね。そうした時代があったからこそ今回の再会はより嬉しくて楽しくて一気に気持ちが高ぶった事でしょう!今回のフィレンツェはまた、大切な思い出となりましたね!!

投稿: しば | 2010年4月13日 (火) 09時45分

saraichefさん、たまには青春小説風もいいでしょ?
10年前の自分が今の自分を見ると、すごく羨ましがるだろうなって思う。でも今の自分が10年前を振り返って見ても、輝いて見える。
・・・って事はさ、けっこう良い人生送ってるんだって事だな。

しばさん、凸山造園の皆さんと知り合ったのは、純子たちと知り合う前ですね。まだ日本料理屋でバイトしてた時代。あの時の凸山造園の人たちが充実しててまぶしく見えました。皆、好青年だなあって思ってました。何が自分と違うんだろうって真剣に考えた事もあったんですよ。

投稿: 俊寛 | 2010年4月13日 (火) 13時24分

友達はいいね!そういう僕もあなたと知り合えてよかったよ。イタリアに旅立つときは、あなたがここまで有名になるとは思わなかった。立派になったね。

投稿: あしたのもと | 2010年4月14日 (水) 21時59分

あしたのもとさん、私にとっても会社員時代は大切な過去だよ。今でも見に来てくれるから、気合の入った所を見せなきゃと思うのです。

投稿: 俊寛 | 2010年4月14日 (水) 23時59分

こんにちは。
とても素敵なエッセイになりましたね。

しけた中華料理屋で互いに毒づきながらチャーハンをかっこんでる昔のオレたちに…、自分でも重なる部分があるので、まだ20代後半になったばかりだった頃を思い出しました。

今の自分たちもまた、さらに未来につながっているんだな。頑張らなくちゃ!

投稿: hiro | 2010年4月19日 (月) 15時53分

hiroさん、こんにちは。
お褒めいただき、ありがとうございます。
最後の方はだいぶ考えました。何か格好良い言葉でしめたいなあって。
あの頃は自分の野望と現実のギャップに苦しんでましたからね。今、思うと可愛いもんだけど、当時は必死だったので。
若い頃って皆、同じような思いを抱いて生きてるんじゃないかなあ・・・。

投稿: 俊寛 | 2010年4月19日 (月) 19時37分

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