彫刻鋳造工房 マリネッリ。
さて、アルノ川沿いの彫刻のお店、バザンティさんに紹介してもらった彫刻鋳造工房 マリネッリさん。ここはフィレンツェからバスで1時間ぐらいの所にあるバルベリーノ・バル・デルザという所にあります。その日、朝一番でバルベリーノに行ったのですが、ツーリスト・インフォメーションで場所を聞いてみたら、わからないと言われました。バルベリーノと言ってもけっこう広いから、端の方にあるらしく、むしろバスの終点であるポッジボンシの方が近いから、そちらのインフォメーションで聞いてくれと。納得しましたが、この辺のバスは1時間に1本なんですよね。
そこからまた20分ほどでポッジボンシに着いてインフォメーションで聞いてみたら「ここはポッジボンシだからバルベリーノの事は管轄外でわからない。」と言われました。ただポッジボンシとバルベリーノの郊外に工業団地があるので、多分そこじゃないかと教えてくれました。まあツーリスト・インフォメーションは本来旅行者のためのインフォメーションであって、工業団地を訪ねる旅行者なんていないわな、普通。
しかたないのでマリネッリさんに電話をかけて聞いてみたら「タクシーを見つけなさい。運転手に代われば行き方を説明してあげるから。」と言われました。えー、最初からそうすれば良かったんですけどね。知らない所に電話するのは緊張するのです。
そんなこんなで、ちょっとした冒険気分も味わったマリネッリ訪問。バザンティのオーナーさんが私の事を全部説明してくれてたようで、到着後もこれまでに無いほどすんなりと取材させてもらいました。一通り工場を一巡した後は「どこでも好きに撮ってかまわないよ。」というありがたいお言葉。遠慮なく撮らせてもらいました。
というわけで1枚目は「まさにこれが見たかった!!」と思ってたミケランジェロのダビデ像。ブロンズ製ですね。昨日のブログの写真のように最終的には真っ黒になる。
大体の彫刻は分割して鋳造して、最後につなぎ合わせるのです。このダビデ像も溶接してる所ですね。
今回の取材では溶かした金属を流し込む鋳造の場面が見れなかったのですが、型というのは分割してある上にシリコンで囲ってしまうと原型が何かわからなくなるのです。だから切り絵にするのであれば、つなぎ合わせて形がわかる物を仕上げてる場面の方が面白いかもしれませんんね。
2枚目、珍しいアングルでしょう?
ダビデ像の頭です。イタリア行きの前に「ダビデ像のうなじを見ておいで♪」と言われましたが、うなじどころじゃないのである。このアングルだとつむじが見れます。
3枚目はフィレンツェのメルカートヌォーボの猪。分割されてる様子が良くわかりますね。下あごや四肢がまだ付いてない状態。猪の向こうには台座があいます。こういう、オリジナルから型を取って鋳造しても彫りは甘くなるので、彫金刀や鑢を使ってシャープにする必要がある。作業としてはブロンズ職人と同じですね。
4枚目はヴェロッキオのダビデ像。完成間近ですね。これはオリジナルの彫刻もブロンズ製なので、本物と見分けがつかないですね。同じのが何体もあるのはちょっと不思議な気分です。さっきのミケランジェロのダビデ像の横でも、もう1体作ってました。
5枚目、女の子が作っているのはドナテッロのダビデ像の胸から上の部分。(ダビデ像ばっかしね。)赤いのは蝋です。これを型に貼り付けて行き、シリコンで覆う。
作業自体はブロンズの彫刻がこの世界に存在した時から同じ方法ですね。シリコンや蝋など、素材は現代の物なんだけど、技術自体は大昔から変わらない。日本のならの大仏も同じ技法で作られてるんですね。
6枚目はミケランジェロのピエタ。バチカンのサンピエトロにある彫刻ですね。オリジナルは大理石なので白いのですけどね。
水洗いした後の状態。ここまで来るとほぼ完成に見えるけど、これからまだ表面をバーナーであぶって焼き色を付けたりするんだそうです。
最後に工房の皆さんと。 丁度昼休みになったので、作業をやめてワラワラ集まって来ました。この工房では10人ぐらい働いてるかな。写真は私の作品のアルバムを見てるところです。「すごい事をやるんだねえ。」と感心されました。「いや、それはあなた達の仕事の方が凄いと思うけど・・・。」と言い返した。
みんな性格の良さそうな人たちでした。作ってる物も凄いから働いてて楽しそうだし・・・。
切り絵やめて、いっそここに就職したいと思いました!!
いや、別に彼らから「ここに就職しない?」と聞かれたわけじゃないので、勝手にそう思ったんですけどね。
ともあれ、想像以上の良い物を見せてもらったので、地に足が着いてないほど大喜びして駅への道を歩きました。行きはタクシーだったけど、2キロ程度まっすぐ歩くだけだったので。
今回のイタリア滞在での取材はここで終了。合計8軒、良いものをたくさん見せてもらいました。11月の名古屋、来年の秋の東京の個展に向けて、目の前にある物を全部吹っ飛ばすぐらい凄い作品を作ろう♪
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